第47回 新潟県中材業務研究会Q&Aの補足について。(2019年7月21日記載)

 2019年7月20日(土)朱鷺メッセ(新潟市中央区)にて開催されました第47回 新潟県中材業務研究会Q&Aにて会場から「文具用両面テープでのLTSF滅菌の適合性」についてご質問があった際に、児玉会長からのご指名により回答させていただいた内容について、下記の通り補足説明申し上げます。

 

 両面テープなど粘着部分を有する素材がLTSF滅菌で滅菌きるか?どの程度ホルムアルデヒドが残留するのか?について実験した報告は残念ながらありません。しかし、一般的にリネンやガーゼなどの素材をLTSF滅菌するとホルムアルデヒドの残留の問題が考えられるので、今回のような文具の滅菌にEOG滅菌を含めてLTSF滅菌もお勧めできません。これは東京医科歯科大学久保田英雄先生のこちらのご発表(36枚目)からの引用です。久保田先生はISO25424で規定された擬似滅菌物でのLTSF滅菌残留に関して論文を執筆されています。「2種類の包装材料に使用した低温蒸気ホルムアルデヒド(LTSF)滅菌における被滅菌物へのホルムアルデヒド残留性医機学Vo.88, No.6(2018) (25)  残留についてはこちらの論文をご参照ください。

 

 では、粘着テープなどの滅菌はどうするのが適切かというと、HOGYメディカルさんで販売されている滅菌済みのオイフテープなどを活用することが一つの選択肢と考えられます。こういった製品であれば粘着部分への滅菌剤の残留は規定値以下となっていますので、安全な使用が可能です。

 

 また、浜松医科大学 石野先生より、このQ&Aの回答時の追加として、EOG滅菌の残留性について「医療現場で行なっている24時間程度のエアレーションは1978年のAAMIの基準(滅菌保証のガイドライン2015,  89ページ、表6-7 エアレーションの推奨時間)をもとに設定してある。当時と滅菌物が異なる現在ではこのエアレーション時間ではガスの除去が不十分である」とご指摘されておりました。ガイドライン2015、84ページ表6−2には「EOGの残留限界値」が記載されています。一般的にここまで残留値を下げるために、医療用ガーゼなどの製造会社は1週間程度エアレーションを行なっているようです。

 現在の滅菌物に合わせてエアレーション時間をどの程度延長すべきかについては「エチレンオキシドガス滅菌後の医療用プラスチックにおけるエアレーション時間の予測」別宮尚美先生 Journal of Healthcare-assoiciated Infection 2016;9:33-41 が非常に参考になるかと思います。

 

 研究会終了後にフロアにて「医療現場でガーゼやリネンの滅菌に高圧蒸気滅菌を使用したいが、滅菌後の変色が気になって使うことができない」というご質問がございました。これについては日本衛生材料工業連合会から発行されている衛生材料Q&A第3版に「医療ガーゼの繊維は高温により多少変色する場合がありますが、品質・効果に問題はありませんので、安心してご使用ください」と記載がございますので、こちらをご参照ください。

 

 もう1点フロアにて駆血帯(エスマルヒ)の折りたたみ方の質問をいただきましたので、駆血帯(エスマルヒ)のたたみ方による滅菌効果の検討」大木伸雄先生 長野県身体障害者リハビリテーションセンター手術室 日本手術医学会20(1):  59-61, 1999. という折りたたみ方よる比較論文がございます点をご紹介申し上げます

 

 この度は研究会にて発言の機会をいただきましたことを児玉会長に感謝申し上げます。研究会時には回答時間が限られておりましたので、上記の通り補足申し上げます。

  

学術部 栗原靖弘